アンドレス・マリン、バイラオール.インタビュー
“ある音楽を同じように踊ることは絶対無い、
俺は人形じゃなくて人間なんだから”
シルビア・カラド.セビージャ、2004年10月
不均性、三、奇数。アンドレス・マリン、プロとして一歩前進。60公演以上を成し遂げた“マス・アジャー・デル・ティエンポ”の次に、新作“アシメトリーアス”を発表。「エレガント、ダイレクト、そして素直な作品」
だと言う。彼によると、「全ての面において好きなフラメンコが感じさせてくれる印象を表現したい」 とのこと。このスペクタクルの為に、三人のギタリスタ、三人のカンタオール、そして、三人のバイラオーラを集めた。作品では全員が目立つ役を演じる。トカオール達(ギタリスタ)が作曲の主な責任者、「一人一人のギタリスタのパソナリティーを見ると同時に、俺のバイレを彼らの音楽に順応させて行きたかったんだ、同じ踊りを続けずに」
批判者の論法となっている、「アカデミックなバイラオールではない」というプロファイルだから可能なことなのだそうだ。態度を変えないことはもはや不可能、「ある音楽を同じように踊ることは絶対無い。俺は人形じゃなくて、人間なんだから」
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カンテについての態度も同じ。“アシメトリーアス”のカンタオールの三人、エル・ロンドロ、ホセ・バレンシア、エンカルナ・カリージョの一人一人のカンテは、それぞれが違ったバイレを要求する。「目標はカンテをバイレに順応させるのではなくて、バイレをカンテに順応させること」
その為、通常のようにバイラオールがカンテを指示するのではなく、「歌詞を唄ってもらって、レマーテを入れようとか、違った色合いを探してみよう、とか考えながら踊っていく...
俺が踊れる限りのことをね」 スペクタクルで明確にされていることだが、かれの好みは多種多彩。しかし、あるカンタオールが彼のレフェレンスのなかでひときわ目立っている。そのカンタオールは
ペペ・マルチェナ。「彼のメロディーの理解の仕方が大好きなんだ」 フラメンコ研究家から罵られているにもかかわらず、違った世代のカンタオールに影響を与えたペペ・マルチェナの強い印象が“アシメトリーアス”にも感じられる。
「受け入れられていなかったころにも勇気だった、少し進んでたと思うし、自然な形でだけどね...
ちょっとエキセントリックな面までもが」 彼のカンテからミロンガとタラントを選択、「俺にとって彼はカンテス・デ・レバンテ
(レバンテ地方のカンテ) の天才だったね。ミナスに唄ってたんじゃない、愛を唄ってたんだ、最もすばらしいものを、女性をね」
作品でのこの場面はウルスラ・ロペス(アンダルシア舞踊団のソロ・バイラオーラ)と二人で登場。マルチェネーロなカンタオールの歌詞を一人で残る彼女が肉感的なバイレで踊りこなす。歌詞は、“テ・コンプロ・コン・エル・レファーホ、ウナス・エナグアス・デ・アスリーナ”。若きも優れたこのバイラオーラの仕事はそれだけではない。「三枚のすそ付き上衣の為のアレグリアスの振付を構成の際、俺の右腕となって働いた。俺が主な構成を、そして、彼女が上衣の動きを担当したんだ、女性には自由にさせないといけない、男には分からないことはできないから」
結果はとても視覚的、ダイナミックで好色。長いすそ付きの黄色上衣をまとって、ウルスラ・ロペス、レオノル・レアル、エレナ・アルガド、の三人が踊る。
“アシメトリーアス”はフラメンコで最も唄われている、27年世代の詩人たちへのオメナヘもが含まれている。スペクタクルの一部にはバイレが取り除かれ、カンタオールとギタリスタの6人が構成するペアによって、ミゲル・エルナンデス、ラファエル・アルベルティ、フェデリコ・ガルシア・ロルカが思い起こされる。「詩はとても力強く感情的で、主張的なところがフラメンコと似ている」
アンドレス・マリン、違った形のカンテやバイレをそれぞれの詩人の象徴学に結び付けたかったそうだ。「エンカルナ・アニージョを聴いたとき,彼女のカディスを思い起こすカンテはアルベルティの詩に適してると思ったんだ。ホセ・バレンシアのカンテは、ヒターノにインスピレーションを得たロルカの詩に。憂うつなエル・ロンドロのカンテはミゲル・エルナンデスの詩にあってると思ったのさ」
作品の価値にプラスとなっているのは、現代のレパトリーでは珍しい、ハベーラス、ソレア・デ・チャラムスコ、エル・ファンダンゴ・デ・ビスコンデ、ファンダンゴス・デ・ルセーナ、アレグリアス・デ・コルドバ...
といったようなカンテを選んだこと。カンテについての研究の結果ともいえるような作品となっている。アンドレス・マリン自身が言うように、「俺の作品には、カンテ、音楽、そしてバイレだけしかない...
今のところは」 背景はライトアップだけ。“マス・アジャー・デル・ティエンポ”ではドミニク・ユーによって作品が必要としていた親密なアンビエントが創り上げたならば、“アシメトリーアス”では、「ライトアップ(モリス・べジャーの為に働いたことのあるフランシス・マナーのデザイン)がさらにさっぱりとした感じになっている」
入場券を売りつくした数少ないショウの一つとなったビエナル・デ・フラメンコ・デ・セビージャ2004での初演直後に、“アシメトリーアス”は世界ツアーをフランスで開始。バンリュー・セン・ナショナル・デ・アンシー、イブラインのサン・キンティンとナルボンでの公演の後は、ラ・マンション・デ・ラ・ダンス・デ・リオンにて2004年11月17日から20日まで連続公演の予定。同じ舞台に今シズーンはメルス・カニンガム、モリス・べジャル、ブランカ・リーといった一流アーティストも公演する。2シーズン前に舞踊団を設立したアンドレス・マリンの格の高さを証明しているといえよう。この期間の感想は、ポシティブだっただけではない。「自ら成長したと思う、ためらうことも少なくなったし、少しづつ理解されるようになってきた」
この仕事は「つつましさと粗朴さから生まれた」結果、ただ「感じるとおり踊る」ことを目指して。
flamencojapan@flamenco-world.com