エストレージャ・モレンテ
バイオグラフィー、ディスコグラフィア、Real Audioと読者からのコメント


 



新人カンタオール.リスニングガイド.スペシャル

若いカンテの行く先

シルビア・カラド、2004年11月

「若手カンタオールたちは個性的なカンテを身にしたいならカマロンだけを聴いていては駄目だ」 と言うパコ・デ・ルシアの発言にもかかわらず、違った学派を守り、豊かにしていこうという意志‐こういった態度のアルティスタは少ないが‐の新人カンタオールたちがフラメンコの世界に突入し、新しいスタイルの道を切り開いて行こうとしている。もちろん“カマロネーロ”(カマロン派)  なカンタオールももいるが、ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネスの信奉者、地元のスタイルやジャズ、ポップ、ボレロや現代音楽に近づく者もい、好みは多種多彩。伝統と進歩を混ぜ合わせ、フラメンコのバイタリティーを保とうとする意志が感じられる...  知識とクオリティーを忘れずに。

カマロネーロス (カマロン派)
ネオクラシコス (新古典派)
テリトリオ (地元派))
フェステーラス (祭り派)

  カマロネーロス

カマロンがカンタオールの一世代に多大な影響を及ぼしたことは確実。響き、転調、スタイル...  サン・フェルナンドのアルティスタの美学さえ、ドゥケンデ、ディエゴ・エル・シガーラ、エル・ポティートといったカンタオール、モンセ・コルテス、レメディオス・アマージャ、カルメン・カルモナ、ラ・タナのようなカンタオーラによって養われ続けている。カマロンによってわずか9歳で庇護されたドゥケンデは彼のアイドルの辿った道を、特に優れた“サマルコ”のようなソロ・アルバムでにしろ、ライブでにしろ辿り続けている。パコ・デ・ルシアとツアーを過去にも、そして今でも続け、神話的なカンタオールの“代役”として活躍している。その一例がパコ・デ・ルシアのアルバム“ルシア”でのタンゴス。

間違いないカマロンの響きを持つカンタオールの一人が、幼い頃、ルシア一家に発見され庇護されたエル・ポティート。彼の一枚目のアルバム“アンダンド・ポル・ロス・カミーノス”はパコ・デ・ルシア、トマティート、ビセンテ・アミーゴ、リケーニ、カニサーレス...といった超一流ギタリスタ、正にフラメンコ・ギタリストの“オル・スターズ” の伴奏でレコーディングされている。当時のポティートはわずか14歳。他のソロ・アルバムやホルへ・パルド、パコ・デ・ルシア(“シリアブ”“コシータス・ブエナス”)、ケタマ(“デ・アキー・ア・ケタマ”)といったアルティスタとのコラボレーションも多彩。現在はトマティートのグループの一員として活躍している。


ドゥケンデ.

ディエゴ・エル・シガーラ

1988に“ディエギート”という芸名でデビューし、個性的なスタイルを築こうと努力を続けているにも関わらず、初期にはディエゴ・エル・シガーラもカマロンの後を辿ったカンタオールの一人。“ディレクト・エン・エル・テアトロ・レアル”で聴けるように、伝統的なフラメンコの厳しい規則にそって自らのスタイルを築いていったアルティスタ。しかし、ポップに近いアレンジのタンゴスやブレリアスなども成し遂げ、フラメンコを違ったジャンルに持ちこんでいる。世界的なヒットとなった“ラグリマス・ネグラス”はキューバ人ピアニストのべボ・バルデスと一緒にレコディーングした宝。アルバムのフォーミュラは、伝統+コミュニケーション。


カンタオーラたちもカマロンの影響を大いに受けている。セビージャ出身の
レメディオス・アマージャはカマロンが賞賛していたカンタオーラ。カマロンと同じ独特のケヒーオ(嘆き声)、違ったジャンルに視野を広げる能力、音楽性とコンパスのセンスを分かち合っている。彼女の作品は多数だが、“メ・ボイ・コンティーゴ”のヒットがきっかけで大観衆に知られるようになり、独自のスタイルを築いた。“ヒターナ・ソイ”、“ソンソネーテ”ではそのスタイルを繰り広げている。女性の中で、カマロンの響きを感じさせるもう一人のカンタオーラといえばモンセ・コルテス。アントニオ・カナーレス舞踊団のレギュラーメンバーであるだけではなく、ソロ・カンタオーラとしても活躍している。その結果が“アラバンサ”と“ラ・ロサ・ブランカ”の2枚のアルバム。最近になってプロの世界に加わり“カリビナカー”を発表したグラナダ出身のカルメン・カルモナや、パコ・デ・ルシアの“コシータス・ブエナス”の何曲かのカンテやコーラスを担当したラ・タナなどにも注目すべし。

 

 
 

  ネオクラシコス
 

長年の間、フラメンコ研究家たちから不名誉とされて来たが、ペペ・マルチェナ、フアン・バルデラマ、エル・ペナといったカンタオールたちが繰り広げたスタイル、ファンダンゴス系のスタイルや、カンテス・デ・イダ・イ・ブエルタ、カンテス・デ・レバンテ...  などといったメロディックなカンテを磨こうとしている多くのカンタオールたちがいる。ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネスやアントニオ・チャコンといった聴き逃せないアルティスタたちの遺産を甦らせようとしている者もいる。このグループを代表するカンタオールたちは、エストレージャ・モレンテ、マイテ・マルティン、ミゲル・ポベーダ、アルカンヘル、セグンド・ファルコン...。このグループに属するカンタオールたちの共通点は、リスクを覚悟し、違ったジャンルとの出会いを探しながら進歩しようという意志を持っていること。間違いなくエンリケ・モレンテがこの新古典主義派の代父と言えよう。


エストレージャ・モレンテ

エストレージャ・モレンテのケースは特別。コマーシャルな音楽の罠に陥らず、彼女のデビュー・アルバム“ミ・カンテ・イ・ウン・ポエーマ”はスペインの売り上げリストのトップに上った。アルバムは、偉大なマエストロたちの作法で、アレグリアス、タンゴス、ブレリアス、マラゲーニャス、タランタ、メディア・グラナイーナなどなど、様々なカンテのスタイルを取り戻した作品。さらに、フアン・ラモン・ヒメーネスの詩をベースに作曲した実験的なテーマも含まれている。カディス出身の彼女の2枚目のアルバムは“カジェ・デル・アイレ”。クリスマステーマのポピュラーソングで構成され、1931年にフェデリコ・ガルシア・ロルカとラ・アルヘンティーナによってレコーディングされた“カンショーネス・ポプラーレス・エスパニョーラス”からアイデアをとったカルメン・リナーレスの“カンショーネス・ポプラーレス・アンティグアス”のコンセプトに近い作品となっている。次のアルバムは、2004年の6月、グラナダにて発表されたスペクタクル“パストーラ1922”と同様、二―ニャ・デ・ロス・ペイネスへのオメナヘになる予定。


ミゲル・ポベーダ

マイテ・マルティンとミゲル・ポベーダのバイオグラフィーには共通点がある。二人ともカタルーニャ出身、独学、ウニョンのフェスティバルでランパラ・ミネーラを獲得しフラメンコの世界に地位を築いた。年と経験からして、彼女がミゲルの先導者。マイテ・マルティンのスタイルは質素、エモーショナルで簡潔。全てのパロ(曲種)を唄いこなすうえ、インスパイアされるジャンルも欠かさずチャレンジしている。彼女のボレロのアルバム“フリー・ボレロ”、“ティエンポ・デ・アマール”などが象徴的。フラメンコの作品で彼女の傑作となっているのが“ケレンシア”、アントニオ・チャコン、ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネス、エル・ペナや、フアン・バルデラマの伝統的な小唄にも近づいた注解集といえよう。一方でミゲル・ポベーダは同じルーツを探っているが、ヘレス独特のコンパスを主にしたフラメンコにも近づこうとしている。この二重性で、彼のスタイルは全ての面から、厳しいファンや正統派にも幅広く認められているのは、彼の作品、“ビエント・デル・エステ”、“スエナ・フラメンコ”、“サグアン”が明確にしている。室内楽団の為のスイートに現代的なカンテフラメンコを加えたラスト・アルバム“ラファエル・アルベルティ.ポエマス・デル・エクシリオ”のような実験的な作品にも取り組んでいる。ムルシアのフェスティバルで同じ賞を受賞しているマドリッド出身のパコ・デル・ポソも彼らの歩んでいる道に近い、伝統に忠実でありながらもフュージョンと親しいというスタイルのカンタオール。“ベスティード・デ・ルーセス”が彼のファーストアルバム。

同じラインのカンタオールで優れているのがアルカンヘル。ウエルバ出身の彼は、その地のアイデンティティーであるカンテ、カンテ・ポル・ファンダンゴスに幼い頃から取り組んだ。その後はバイレ名手の為に唄いながら自らのカンテを磨いた。マノロ・カラコル、ペペ・ピント、フアン・タレガをレフェレンストし、ギタリスタのフアン・カルロス・ロメーロと共に、ソロ・カンタオールとして育っていった。同じギタリスタによってプロデュースされたのが、フラメンコのルーツを新たにした貴重な作品、“アルカンへル”と“ラ・カジェ・ペルディーア”。彼と平行な経歴を築いているのがセグンド・ファルコン。セグンド・ファルコンのグループは地元、マイレーナ・デ・アルコルを拠点としている為、彼のアルティスティック代父のアントニオ・マイレーナがレフェレンス。エバ・ジェルバブエナの舞踊団で何年も働いている彼だが、ソロ・カンタオールとしても活躍しており、彼の作品の中では“ウン・セグンド・デ・カンテ”が優れている。このアルバムは、彼をインスパイアしている“三人のエンリケ”(エンリケ・モレンテ、エンリケ・ソト“ソルデーラ”、エンリケ・エル・エクストレメーニョ)に捧げられている。インドやアラブの他のジャンルとフラメンコとの交際にも励んでいる。スペクタクル“ティエラ・デ・ナディエ”がその結果。

続く >>

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